パワハラ・セクハラ・顧客からの迷惑行為: 会社には相談体制を整える義務
会社には、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、顧客などからの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)について、相談に応じる体制を整える義務がある。相談したことや、調査に協力して事実を話したことを理由に、解雇などの不利益な扱いをしてはならない(労働施策総合推進法 第 31 条・第 33 条、男女雇用機会均等法 第 11 条)。
3 つのハラスメントと会社の義務
| 何を指すか | 条文 | |
|---|---|---|
| パワーハラスメント | 職場で、優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、就業環境が害されること | 労働施策総合推進法 第 31 条 |
| セクシュアルハラスメント | 職場での性的な言動への対応で労働条件の不利益を受けること、または性的な言動で就業環境が害されること | 男女雇用機会均等法 第 11 条 |
| 顧客等の言動 | 顧客・取引先・施設の利用者などの言動で、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、就業環境が害されること | 労働施策総合推進法 第 33 条 |
どれも会社は、相談に応じて適切に対応するための体制の整備など、雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
就活中の学生への性的な言動についても、2026 年 10 月から会社に防止の措置が義務になった(OB・OG 訪問の記事)。
パワーハラスメントの 3 つの要素
条文の言葉を分けると:
- 優越的な関係を背景とした言動(上司から部下だけでなく、知識や経験の差、集団から個人なども考えられる)
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害される
業務上必要で相当な範囲の指導は、この定義に当たらない。
※ 1 の括弧内はこの記事の説明。具体的な判断は厚生労働省の指針と個別の事情による。
パワハラの 6 つの類型
厚生労働省のポータルサイト「あかるい職場応援団」が挙げる代表的な類型:
| 類型 | 例 |
|---|---|
| 身体的な攻撃 | 殴る、蹴る、物を投げつける |
| 精神的な攻撃 | 脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言 |
| 人間関係からの切り離し | 仕事から外す、別室に隔離する、無視、仲間外し |
| 過大な要求 | 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 |
| 過小な要求 | 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない |
| 個の侵害 | 私的なことへの過度な立ち入り(職場外での継続的な監視、私物の撮影、機微な個人情報の暴露など) |
これに当たりそうな言動でも、上の 3 つの要素をすべて満たすものがパワハラで、業務上必要かつ相当な範囲の適正な指示や指導は当たらない。
会社の防止措置の義務は、パワハラ・セクハラに加えて、顧客などからの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)についても 2026 年 10 月 1 日から始まった。
数字
厚生労働省の令和 5 年度「職場のハラスメントに関する実態調査」から(広報誌『厚生労働』2024 年 12 月号):
- 過去 3 年間に勤務先などでセクハラを受けたと答えた労働者: 6.3%(令和 2 年度調査から 3.9 ポイント減)
- 過去 3 年間にセクハラの相談があったと答えた企業: 39.5%
就活中・インターンシップ中のセクハラの数字は就活セクハラの記事。
セクハラの裁判例
厚生労働省の「確かめよう労働条件」の解説: セクハラは被害者の人格的利益や「働きやすい職場環境のなかで働く利益」を侵害する不法行為に当たりうる。従業員のセクハラについて、会社が損害賠償の責任を負う場合がある。
| 事件 | 裁判所・年 | 判断の要点 |
|---|---|---|
| 海遊館事件 | 最高裁 2015 | 管理職による繰り返しの露骨な性的発言(言葉によるセクハラ)を理由とする出勤停止・降格は、懲戒権の濫用に当たらず有効 |
| アムール事件 | 東京地裁 2022 | 代表者による性的な発言や身体接触はセクハラ・パワハラとして不法行為。会社も安全配慮義務違反の責任を負う |
体に触れなくても、言葉だけでもセクハラになる。
入社前に確かめられること
- 相談窓口があるか、社内か社外か(採用ページ、就業規則)
- 研修の内容に、ハラスメントの研修が入っているか(青少年雇用情報の研修の項目)
- 最初の会社を 3 か月未満で辞めた人の 52.3% が「人間関係」を理由に挙げている(辞めた理由)
相談先
- 会社の相談窓口
- 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)
- 労働条件の相談は労働基準監督署
読むときの注意
- 法律相談ではない。
- 会社の義務は「措置を講じること」。個別のハラスメントが法的にどう評価されるかは、事実関係で決まる。
出典: 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第 31 条・第 33 条 / 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 第 11 条・第 13 条(e-Gov 法令検索)/ 厚生労働省 広報誌『厚生労働』2024 年 12 月号「調査から読み取る 職場におけるハラスメント対策」/ 厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例: セクハラ(海遊館事件、アムール事件)/ 厚生労働省「あかるい職場応援団」パワーハラスメントとは / 厚生労働省 ハラスメント対策リーフレット(カスタマーハラスメント 令和 8 年 10 月 1 日から)。2026-10-31 確認。