入社時や退職時に「同業他社に転職しない」と誓約しても、その制限が合理的な範囲を超えて**職業選択の自由を不当に拘束する**なら、公序良俗に反して無効になる。合理的かどうかは、**期間・場所・職種の範囲・代償の有無**などで判断される(厚生労働省「確かめよう労働条件」)。一方、働いている間の業務上の秘密は守る義務があり、違反は懲戒の対象になりうる。

## 競業避止: 厚生労働省が紹介する考え方と裁判例

| 判断の要素 | 見るところ |
|---|---|
| 期間 | 退職後何年か |
| 場所 | 地域の限定があるか |
| 職種 | 制限される仕事の範囲が狭いか広いか |
| 代償 | 制限の見返りに手当などがあるか |

| 事件 | 裁判所・年 | 判断の要点 |
|---|---|---|
| フォセコ事件 | 奈良地裁 1970 | 期間 2 年と比較的短く、対象の職種も比較的狭い。在職中に機密保持手当を受けていた。制限は合理的な範囲を超えないとして認めた |
| 三晃社事件 | 最高裁 1977 | 同業他社への再就職をある程度の期間制限することは、ただちに職業の自由を不当に拘束するとはいえない。違反した場合に退職金を自己都合の半額にする定めも、退職金の功労報償的な性格から合理性がないとはいえない |

## 守秘義務: 裁判例

| 事件 | 裁判所・年 | 判断の要点 |
|---|---|---|
| 日本リーバ事件 | 東京地裁 2002 | 競合他社への転職が決まった後に、機密を扱う会議に出て入手した資料を持ち出すなど背信性は極めて高く、懲戒解雇は権利の濫用に当たらない |
| メリルリンチ・インベストメント・マネージャーズ事件 | 東京地裁 2003 | 自分の権利を守るために弁護士に情報を開示したことは守秘義務違反に当たらず、懲戒解雇は無効 |

## 新卒が誓約書を受け取ったら

1. **期間・場所・職種**: 「退職後○年間、同業他社への就職を禁じる」の○年と範囲を読む
2. **代償**: 制限に見返りがあるか
3. **退職金の扱い**: 違反した場合の退職金の減額の定めがあるか
4. **守秘の対象**: 何が秘密に当たるかが具体的か
5. **署名の前に聞く**: 分からない条項は、署名する前に会社に聞く

就活で見た情報(選考課題、インターンシップの内容など)にも、守秘を求められることがある。参加時の同意書を読んでおく。

## 読むときの注意

- 判例の紹介で、個別の事案の結論ではない。

<p class="note">出典: 厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例: 競業避止(フォセコ事件、三晃社事件)・守秘義務(日本リーバ事件、メリルリンチ・インベストメント・マネージャーズ事件)の判示の骨子と基本的な方向性。2026-10-31 確認。</p>
